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少人数私募債発行の流れ

少人数私募債発行の手続きは基本的には他の社債発行の場合と同様ですが、官公庁への届け出などない分比較的簡単な手続きであり、会社のペースで進めることができるでしょう。

募集要項の作成

まずは、社債発行条件を決定します。

  • 社債募集総額
    慎重に設定する必要があります。満額の応募があるとも限りませんが、とは言え無理の無い範囲で設定しなくてはなりません。
  • 1口の金額
    基本的には募集総額を49で割った額になります。あまり高額ですと応募者が集まりにくいことも考えらます。
  • 口数
  • 社債利息の利率
    社債権者にとっての魅力を考えるのと同時に元本保証がないことを踏まえて、金融機関の預金金利よりも高め(2%~5%)に設定する必要があります。
  • 払込期日
  • 償還期間
    償還方法は満期一括償還が一般的です。償還期間に関しては、資金の使用目的(設備資金・運転資金など)によっても異なりますが、3年~6年程度に設定する企業が多いようです。

など。

募集要項は、勧誘対象者に提示し購入を検討してもらう指針の一つとなります。将来、会社にとっても購入者にとっても損失が出ないように慎重に決定する必要がありますので当然以下の作業などが前提として必要となるでしょう。

  • 自社の経営状況、財務状況を正確に把握すること
  • 資金使途の明確化及び資金使途を踏まえた調達額の算定
  • 資金調達後の利益計画、資金計画の策定
  • 社債償還までのキャッシュフロー予測

社債発行の決議

取締役会がある会社は取締役会で、ない会社は株主総会や社員総会の決議で少人数私募債の発行を決定します。決議後は、会社運営の意思決定の証拠として「取締役会議事録」「株主総会義理録」など議事録を作成し、会の日から10年間会社で保管する必要があります。

社債発行趣意書及び事業計画書の作成

勧誘対象者に、社債発行会社やその社長が信頼に足るかを判断してもらうためには、なぜ少人数私募債を発行するのか、その目的、具体的な使途は何なのかということを理解してもらったり、社債発行会社の状況や情報を開示し納得してもらう必要があります。そこで、募集の際には募集要項以外にも社債発行趣意書、事業計画書を勧誘対象者に渡します。

社債発行趣意書には発行の趣旨を記載し、事業計画書で具体的な内容を明記します。
事業計画書の構成例として

  1. 会社概要
  2. 事業概要、製品とサービス
  3. 社債発行の目的、資金使途
  4. 市場分析(市場、競合、自社について)
  5. 戦略概要
  6. 資金計画、利益計画、設備投資計画など

などは、最低限盛り込む必要があるでしょう。

勧誘対象者の決定と勧誘

勧誘対象者は49名以下でないといけませんので、会社について理解してくれる、購入に至ってくれそうな人に絞り込む必要があります。また、会社の情報を開示することになりますので、会社にとっても信頼できる人ということになると、やはり社長や社長の一族、友人、知人、自社役員、自社従業員、取引先などの縁故者になるでしょう。

勧誘の方法としては、個別に訪問する方法と少人数私募債発行説明会を開催する方法があります。

社債申込証の作成と購入の申込受付

社債申込証は、会社法上も不可欠な書類です。社債申込証以外の方法による申込みは無効ということになり、社債契約そのものが成立しません。
社債申込証には以下の事項を記載します。

  1. 申込人の住所及び氏名
  2. 発行会社の商号
  3. 社債の総額
  4. 社債の種類
  5. 社債の金額
  6. 社債の利率
  7. 社債の発行価額
  8. 社債償還の方法及び期限
  9. 利息の支払い方法及び期限
  10. 実際の社債応募金額が募集金額に達しない場合、実際の応募額を社債の総額とする旨の注意書き
  11. この記載がないと募集金額に達しない場合社債を発行することができなくなります。

  12. 最低券面額を複数の人によって購入でき、その場合代表者を定める旨の注意書き
  13. 申込希望者が、1口の発行価額が高額で手がでないといった場合に、1口を複数人で購入してもらい、購入者1人あたりの払込額を下げるという方法もあります。

社債申込証を会社に提出してもらい受付となりますが、この時点ではまだあくまでも申込であって購入の決定ではありません。また、社債発行会社は社債申込証を受領したら社債申込受付票を申込者に交付し、受理した旨を伝えると尚良いでしょう。

社債申込者の審査と発行額の決定

社債発行会社は申込者の中から実際に社債権者になってもらう人を審査し、社債権者と購入口数を決定します。

縁故者にのみ勧誘をしていても、会社にとって全く関係のない人からの申込もあるかもしれません。単なる金融商品を購入しただけと捉えられた場合、例えば短期で解約を要求してくる可能性もないとは限らないのです。縁故者であるか、信頼できる相手か適格審査を行い慎重に対処する必要があります。

応募金額が募集金額に満たない場合は応募金額が社債の発行額となります。また、応募金額が募集金額を超えた場合には以下などの対応を取ります。

  1. 募集金額の増額
  2. 募集要項にあらかじめ「応募金額に関し、募集金額に対して過不足が生じた場合、適宜募集金額を決定する」と記載しておけば、応募金額が募集金額を超えた場合に応募金額を社債の発行金額とすることができます。

  3. 申込者の一部に減額してもらうか、今回はお断りする旨伝える

募集決定通知書の送付

社債発行総額が決定したら速やかに購入者に募集決定通知書を送付し、この段階で少人数私募債の引受が確定したことになります。募集決定通知書には申込金額、払込期日、振込口座などを記載し、社債券の額面金額を購入者に払い込んでもらいます。

振込口座は会社が通常使用している決済口座とは別の社債専用口座を用意した方が良いでしょう。

入金を受け社債申込証拠金預り証を送付する

入金があったら社債申込証拠金預り証を社債権者に送付します。社債申込証拠金預り証には、申込金額の受領日、受領金額、社債の券面金額と枚数などを記載し、収入印紙を貼ります。

もしも社債券を発行する場合社債権者は、社債申込証拠金預り証を社債発行会社に提出することによって引き換えに社債券を受け取ることになります。
*社債券を発行せず利札(社債利息の引換証のようなもの)飲みを発行することも可能です。

社債券について

社債券を発行すると

  • 印刷費用がかかる
  • 印紙税が課せられる

などのデメリットがあるため、発行しない会社のほうが多いようです。

社債原簿の作成

社債原簿は会社法上作成が義務付けられており、またこれを元に発行から償還までの社債権者や社債券の管理をしますので大変重要な資料となります。正確に作成し、厳重に管理する必要があります。

具体的には以下の項目などを記載します。

  • 社債権者の氏名・住所
  • 社債券の枚数・金額
  • 社債の取得年月日
  • 社債券の番号
  • 償還方法および期限
  • 利息支払状況
  • 社債の償還申し出または譲渡した時のその譲渡人の氏名・住所

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